青い絵の具の減りが早くなったのを見て、医者よりも早く癌に気付いた。

窓越しの絵しかないので知り合いでは無かったっぽい

事件を目撃したが「犯人の顔は？」と訊かれておばさんの顔を描いたので無用な誤認逮捕を生んだ

画家とモデルという距離感を大切にしていたので、町で偶然おばさんに会っても簡単な挨拶しかしないし、下の名前も知らない。

彼しか知らない白髪があった

気だるそうなおばさんの頭から炭酸水を大量にかけて頬をビンタし「俺の被写体なんやぞ、ちゃんとせえ」と怒鳴りつけた

普段と違う方向のスーパーに行き出して、慌てて道具を抱えた

失敗作と言えど、おばさんの絵を破ることは出来ないので、途中のおばさんがたくさん保管してある

「春の貴婦人」「夢の中の貴婦人」といったタイトルが多い中、1枚だけ「吐瀉物」というタイトルでおばさんが爆笑してる絵がある

あんま見たくないから裏っ返して扉とかにしてた

画家も頻尿おばさんも頻尿だったので、2人同じタイミングで席を立ってお互い「フフッ(笑)」ってなることがよくあった

毎回毎回、美人に描いてちょうだいと言われて本当に困っている

宇宙とか行かせてゴメンな、子供いるのにな

だんだん腰が曲がっていく様子からブーメランを発明した

その絵の中のおばさんは自分と手を繋いでいる

おばさんと同じタイミングで腕を伸ばす

おばさんが"that"と言うだけで、エアコンのリモコンなのか、耳かきなのか分かったという。

別の人に挑戦しても結局同じシワを描いてしまった

いないおばさんを描いてるはずだが、年々見かける頻度が増えて行ってた

お互い「どっちが折れるか」みたいな関係性になっており、「根比べだな」と思い口元にぐっと力を入れたところ、おばさんが「根比べね」と言って優しい笑みを浮かべていて、それが最高傑作になった。あとは惰性で描いた。

腰に優しい椅子だけが次々に持ち去られていく

いっつも着てるのでステューシーのロゴ書くのが早くなった

若い頃は冗談で済まされる関係だと思ってた
年老いてから全部本気だったのだと気付いた

おばさんの特徴的な髪のために作った色を、継ぎ足し継ぎ足し使っていて、最近は白色を足す回数が増え、減ってきた白の絵の具さえもいとおしく思えてきている。

タクシーに忘れたおばさんの絵をタクシー会社に処分されてしまった

絵の具でも表せない表情は墨で描くことにした

上半身がおばさん、下半身が馬の「おばタウロス」を描いたことをとても後悔している

年齢を重ねるにつれ、絵の中のおばさんは若くなっていった

「あ、閉経したな」ってのが長年描いてきた感覚で解って、その瞬間からおばあさんだろと強く主張して描くのをやめた

おばさんがバッグから飴ちゃんを取り出そうとする躍動感を描けるようになるまで15年かかった

Q.おばさんの死後もおばさん描いてるんですか？

A.描いてないです。ないものは描けませんよね？それともお墓でも描けばいいんですか？嫌ですよ、灰色の絵の具がもったいないので(笑)

Q.では、今は何を描かれてるんですか？

A.今は風刺画ですね。宮迫とかロンブー亮がボストロールで暴力団がゾーマの絵を描いてます。今後発表予定です

Q.楽しみにしてます。

A.ありがとうございます。画家としての私の新たな一ページの幕開けです。

インタビュー後、記者は確信した。「この男は、"おばさんを完成させた"——」おばさんを完成させた男はこの先どんな作品を我々に見せてくれるのだろうか。

名刺を出そうとして鞄から大量の歌舞伎揚げを撒き散らして慌てていた画家の姿が印象的であった。こういうところがおばさんに愛されていたのだろうか。男が見つめるものは、おばさんからボストロール（ロンブー亮）へ。

力作が十数作あるのではなく、別の人かと思うくらい雑なのが四千作もある

歳を重ねるごとに体重が増えていったおばさんにバレないよう、絵を描くときに座ってもらうイスの脚を徐々に太くしていた

遺影にちょっとだけおばさんが映ってた

息抜きに樹を描いたら幹におばさんの血管が浮かんだ

描きたいから描いていたのではなく、実は「こんなおばさんでいいの？」って言われたいがために描いていた

晩年、おばさんが増えた。「1人のおばさんとして」増えた。おばさんが複数いるわけじゃなく、1人のおばさんとして増えたことは、彼の絵にそこそこの混沌をもたらした

閉経してからめっきり赤色が減らなくなった

割り込む背中に、翼を見た

そのおばさんの親族にめちゃくちゃ嫌われている

「おばさんを取ったらお前の人生、何も残らないな」
と批判され焼身自殺したら何も残らなかった

おばさんを見てると8月を思い出しますよ、と言い、キャンパスに目をやり、もう一度おばさんを見るとおばさんが8月になってた、という夢を見たんです、と話すと、おばさんはふふ、と笑い、そして次の瞬間おばさんを見るとおばさんは浅い川になってた。

緑のクーピーの減りが早い

白の絵の具が無くなった頃と、おばさんに本格的に白髪が増えて来た頃が重なり、そこから白を巡る攻防が20年続いた

「確かに美術の教師だな」「確かに国語の教師だな」っていう顔はあるけど、あれが数学で起こったのはびっくりした

全然好きとかじゃなかったらしいですけど、毎年一緒に富士山を見に行ってたらしいです

フラフラする…さっきのキノコ……
おばさん！みんなー！！

風景、形、色、おばさんはすべてを持っているので自分の感性が邪魔になってしまい「感性を山に埋める」と言って、5年くらい帰ってこなかったことがある

ある日、分母から描き始めた

「あなたのモデルになって28年が経ちました。年上の私が、先に逝くとばかり思っていたのに…神様は残酷です。
私のようなおばさんを、なんの変哲も無い女を、こんなにもたくさん描いてくれて・・・先生、


・・・いや、タカシ。母さん、本当に幸せでした。」


弔辞で衝撃の事実が判明する

今年を表す漢字はいつも「熟」

市役所の福祉課が「モチーフ…」と恨めしそうな声掛けをしていく

過ごした時間の数だけ顔にシワを書く。

彼には生まれた時からちんちんが無かったため強烈にちんちんに憧れを抱いた、件のおばさんはまさにちんちんそのものだったので、彼は「己の足りない部品（パーツ）がここに存在している」と感じた、またおばさんも「私はちんちんそのものである」という自覚があったので彼の部品（パーツ）になることを受け入れた。
彼は描き、彼女は描かれた。
ちんちんの無い男と、ちんちんそのものである女、の、SEX、であった。

家事が忙しい日は筆で床を掃除しサインを添えて手伝う

近隣住民に汚いレズビアンアーティストカップルと扱われ、頻繁に警察沙汰になる揉め事を起こしていたらしい

不意に下から引っ張ったらめくれたから、慌てて戻した

完成間近にマスをかいて、サインの代わりに精子を絵にぶっかけた。

その割に性豪だった