遊び場大喜利 | |||
お題 | |||
医師免許の試験であるように、寿司職人の試験でも「これに間違えたら落ちてしまう問題」がある | |||
あかむつさんの作品 | |||
【問題文】 貴方はフグの調理免許を持っていません。しかし知識としてフグの捌き方を知っておりますし、孤独な晩酌を彩るツマミとしてフグを捌いたことも、しばしばあります。さて、そんな貴方が板前として働く「寿司割烹 味良」(味良なんて店名は安直だしハードルが上がってやり辛い、と思いましたか?大丈夫、店名に負けない素晴らしい寿司を握ればいいのです。貴方はそのために試験を受けているはず。気持ちを強く持ち、問題文の続きを読んでいきましょう)を訪ねてきたのはシーラカンスを思わせるような、痩せ細ったおじいさんです。おじいさんはカウンターの一番右端の席に腰掛けて「懐かしいな、亡くなった妻にプロポーズした思い出の店なんだ。本当に懐かしい。あぁすいません、フグの握りをくれるかい?」と言いました。冒頭にもあるように貴方はフグの調理免許を持っていません。フグの握りを出せるのは貴方ではない別の板前が厨房に立つときなのです。そのことをおじいさんに伝えると「どうしても、どうしても食べたいんだ。ワシは見ての通りもう長くない。肺癌での、もう来月には生きてはおれんだろう。だから最後に思い出の味を食べたいんじゃ。あんた捌けるじゃろ。あんたが素晴らしい寿司職人なのは見ればわかる。なぁ頼む。握ってくれんか。なぁに、もし失敗しても気に病むことはないさ。死ぬ時期がほんの少し早まっただけさ。頼む握ってくれんか?」さぁ、困りました。おじいさんの言う通り、貴方は免許こそ持たないですがフグを捌けます。しかし自分がこっそりと楽しむためにフグを捌くのとは訳が違います。下手すれば目の前の人間が死ぬかも知れないのです。ですが、おじいさんの言うことが本当であればおじいさんが思い出の味を楽しめるのはこれが最後のチャンスでしょう。この状況、貴方はどうしますか?(解答欄には"わさび入り"、"わさび抜き"のどちらかを記入してください) わさび入り:おじいさんの願いを聞いて、フグの握りを提供する わさび抜き:おじいさんの願いを聞かず、フグの握りを提供しない 【解説】 わさび入り:不正解です ルールを守らずにフグを捌いているため当然不正解です。少し考えればわかるはずです。そもそも自分が食べる分は自己責任だとしても、免許も持たずにフグを捌いていることに問題があります。ルールを守らない貴方には、わさびが効いた様に辛い人生を送っていただきます。貴方は今後一生、寿司職人になることはできません。 わさび抜き:不正解です お客様に寄り添い、最高の寿司を握るのが寿司職人のあるべき姿です。お客様を蔑ろにし、自らの保身に走る選択は当然不正解です。わさびを抜いた寿司のように腑抜けの貴方は寿司職人にふさわしくありません。貴方は今後一生、寿司職人になることはできません。 この問題の正解は空欄、つまりは沈黙となります。寿司職人というのは寡黙に自らに向かい合い、どこまでも孤高である一面を持っています。この問題において、沈黙に耐えきれずに目の前の選択肢に飛び付いた軽薄なお調子者がいるならばその方は寿司職人とは呼べません。寿司職人とは、ときには町の喧騒に溶け込んで人を笑顔にし、ときには町の喧騒から切り離され孤独に腕を磨き続ける、そんな神出鬼没の求道者の別名でもあるのです。 2015年 へいおまち!お寿司技術者検定 大トロ級より抜粋 | |||
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点 | 名前 | ||
2点 | ほ | ||
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