遊び場大喜利
お題
ドーピングに全てを賭けた陸上選手を描いた映画「ただ、速く走りたくて」の中で一番印象に残っているセリフ
でんらくさんの作品
どこまでも広い青空に響いた空砲の音に走り出した6人の足音は、
私の周りから1人ずつ、1人ずつ減っていって私以外の音は遠く後方に消えた。

幼い時に見た、目の前に誰もいない景色はあまりに壮観で、
そのためであれば何でも出来るとさえ思った。

そう、何でも出来てしまったのだ。

もう通い慣れた薬局の地下へと続く階段は、
私の走る時間と選手生命を短くする
天国にも地獄にも続く階段だった。

世界一速くなった私の暮らしは、
嫁と2人の子供
対照的なゆったりとした生活
本当に幸せだった。

インターホンが鳴った。
ドアモニターに映る数人の警察官の姿は、
この幸せの終わりと、私を新たな戦いの場へ駆り立てた。

幼い時に見たような目の前に誰もいない景色に、私は興奮を隠せない。
警察官もパトカーもヘリコプターも誰も誰も追いつけない。
私は風、私は音、私は光。

のろまどもとの追いかけっこも10年以上が経ち、
海の上を走り戦闘機との追いかけっこにも余裕が出来てきた頃
とある町の市民マラソン大会を見ていた。
色んな年齢ののろまどもが自分たちの精一杯で走ってる姿に
私は気づき、そして急にどうでもよくなってしまった。

近くの警察署に自首をした。
警視庁に移送され、取り調べが始まった。
「どうして自首をしたんだ」
私はあの市民マラソンを見てる時に、
気づいてしまったことを口に出した。

「全力で走ってる時ってブサイクじゃない?」
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